洗体戦隊

クソ大学生の日々の日記

ホラー小説 その壱

乗り込んだエレベーターの手前右側には垢抜けない恰好のキャリーケースを引いたアトピー顔の女が、左側には若い母親と女児が、奥の左側には年老いた夫婦が、中央には俺と短髪のスポーツをやっていそうな若い男がいた。

 

俺はイライラしていた。女児が母親とエレベーターに乗る、乗らないで揉めたため暫くの間、ドアを閉めずに待つことになったのだ。俺は傍迷惑な親子のことなど無視して目的の階まで速やかに行きたかったがアトピー顔の女が律義にも「開く」ボタンを押しっぱなしにした。だから俺は傍迷惑な親子にも腹が立っていたがこのアトピー顔の女にも腹が立っていた。

 

薄ら汚い恰好の冴えない髪型のアトピー顔の女。気持ちが悪い。死ねよ。早く死ね。

 

女児が母親にじゃれつき始めた。おかーさん、ねー、おかーさんー。甘い物食べたいー。さっきアイス食べたばっかでしょ。我慢しなさい。やだー。食べたいのー!もっと甘い物食べたいのー!

 

次第に女児の声と身振り手振りが大きくなる。静まり返ったエレベーター内に小さい子供特有の甲高い声が響く。

 

俺は我慢の限界だった。

 

足を思い切り振りかぶって女児の頭部に蹴りを入れる。ぶぎゃと言い放ち女児は壁に激しく打ち付けられる。素早く続けざまに床にのびた女児の顔面を思い切り踏みつける。幾度となく踏みつける。女児の顔が陥没していく。血も噴き出す。

 

オラオラオラァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!

 

俺の突然の暴力に茫然としていた母親が正気を取り戻したようで急に俺を突飛ばそうと体当たりをしてくる。馬鹿だねえ。通じるわけないのにねえ。

 

俺は母親の顎を思い切り蹴り上げる。母親の口から血が噴き出す。さらにもう一発腹に蹴りを入れると母親は完全にのびた。

 

奥の左側にいた年老いた夫婦の嫁のほうが大声で狂ったように笑いだす。アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャッアヒャーーーーーー!!!おいお前、何を笑っているんだ!こんな光景のどこがおかしいんだ!だ、だってあなた映画みたいなんですもの・・・・・・・・・・・・。アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャーーーーーッ!おいっ!笑うな!笑うんじゃない!映画なんかじゃないんだぞ!

 

その時、突然俺は吹き飛ばされドアに激しく叩き付けられた。

 

俺の隣にいた若い男に思い切り背中に飛び蹴りを食らったのだ。お前はーーーーーー!お前はーーーーーーーーーーー!なんてことを!なんてことをーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!男は続けてさらに蹴りを入れてくる。

 

しかし俺は気づいていた。男が義憤に駆られて俺を攻撃しているわけではないことを。現に男は笑っているのだ。男はただ暴力を行使したいだけなのだ。最高の大義名分を手に入れたわけだ。悪を懲らしめるためという。

 

アトピー顔の女はただ震えている。

 

ドアが開いた。

 

四階。全員の目的の図書館だ。

 

男は俺を蹴るのをやめエレベーターが出る。続いて年老いた夫婦。まだ妻は笑っている。そしてアトピー顔の女が出る。最後に俺だ。

 

母親と女児は放っておく。

 

俺は母親と女児の血に足を取られないように気を付きながら出た。

 

エレベーターは閉まり一階に戻っていく。ススススーっと。

 

あの親子はどうなるのだろう。後日談として二人は一階について乗り込んできた脂ぎった中年の男に犯されたそうだ。卑劣とも言える行為だが世知辛いこの世の中では仕方がないことだろう。抵抗しない者を食い物にするのは自然界の掟だ。

 

ぶはあぶはあぶはあぶはあぶひひーーーー!親子丼だーーーーーーー!ぶひひーーーーーーーーーーーーーーー!ビリビリビリビリビリビリーー!パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンッ!!!

 

イクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッイクッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

 

ドピュッドピュッドピュッドピュッドピュッドピュッドピュッドピュッドピュッドピュッドピュッドピュッ。

 

ハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・