洗体戦隊

クソ大学生の日々の日記

披露

俺は従兄弟の結婚式に来ていた。アメリカ帰りのデザイナーの従兄弟だ。俺は家族とは離れた席で見知らぬ奴らと座っていた。服装と会話からすると従兄弟の同業だろう。会場にいるどいつもこいつも楽しそうな顔をしている。そいつら一人一人に張り手を食らわしてやりたい。しかめ面をしているのは俺一人に違いない。

しかしそれは仕方がないことだ。今の俺に笑えというほうが無理というものだ。俺は大学を留年した。就職もおじゃんになった。自業自得なのは重々承知しているがこうしている間にも同学年の奴らと刻一刻と差が生じていると考えるととても愛想を良くしてなんかいられない。

突然司会の女が喋りだす。皆の注目が司会の女に集まる。式のあいさつのテンプレートのようなものを言い新婦新郎の思い出のVTRが流れ出す。新婦の幼いころの写真。可愛いという嬌声。下らない。どうでもいい。

VTRは流れ続ける。俺の横にいる女が泣いている。意味が分からない。なぜ泣ける?そこまでの関係なのか只の馬鹿なのか。VTRが終わると恩師による下らないスピーチ。愚にもつかない薄っぺらい内容。死ねばいい。

新郎新婦による挨拶。皆さん今日は集まって頂きありがとうございます。うるせえ。きたくて来たんじゃねえ。黙れ。それでは皆さん楽しんでください。喧騒が始まる。隣の女が話しかけてくる。

気持ち悪い。どういった関係なんですか。従兄弟だよ。うるせえよ。話しかけてくるんじゃねえよ。逆の方向の隣の男が話しかけてくる。何されてる方なんですか。無職だよ。まだ学生だよ。うるせえんだよ。ほっとけよ。

新郎と新婦が俺のいるテーブルに挨拶にやってくる。今日はきてくれてありが。その瞬間俺は新郎の目にフォークを突き刺す。一瞬の間のあと叫びだす新郎。茫然とする新婦の従兄弟。

新郎は目を抑えて叫びながら床を転げまわっている。続けざまに横にいる女の頬にフォークを突き刺す。右頬から貫通し左頬からフォークの先端が飛び出す。甲高い声で叫びだす女。

後ろから誰かに羽交い絞めにされそうになる。俺は振り向きざまにエルボーを食らわす。何人もの男が俺に向かってくる。一人を交わすが後ろからタックルされる。前のめりにつん倒れる俺。

一人二人と男が俺にのしかかってくる。もっとだ。もっと俺は滅茶苦茶にしたい。俺からどけ。俺の破壊の初期衝動を抑えるんじゃねえ。糞が。こんなもんじゃねえ。こんなもんじゃ。

 

 

 

 

式は滞りなく進んでいる。隣の女に話しかけられる。にこやかに対応する俺。俺は時折幻視を見る。それが現実になったことは一度もない。