洗体戦隊

クソ大学生の日々の日記

吾輩は。。。。

その野良の黒猫は特定の飼い主はいなかった。近所に住む老婆が毎日深夜にこっそり餌をあげていた。その地区では地域猫を無くす運動をしていた。だから毎晩こっそりと餌をあげていたのだ。見つかると只では済まされない。その野良の黒猫は保健所に連れていかれて飼い主が見つからなければ殺されるし、老婆はルール違反者として近所から白い目で見られる。かと言って老婆にその野良の黒猫を飼う金銭的余裕はこれっぽちも無かったし、第一老婆の住むアパートではペットは禁止されていた。

 

しばらくするとある日を境に一切老婆の姿をぱったりと見かけなくなった。老婆は自室で死んでいた。理由は分からない。電気のスイッチを切るように簡単に老婆の命は打ち切られた。老婆は天涯孤独だった。野良の黒猫が唯一の家族であり、外界との接点だった。老婆の死体は市の職員が始末した。葬儀は行われなかった。

 

必然的に野良の黒猫は餌をもらうことができなくなりいつも空腹だった。その野良の黒猫は子猫の頃から老婆に餌を与えられいたから自分で餌を見つける術を全くもって知らなかった。空腹がピークに達すると野良の黒猫は大きな声で鳴き続けた。けれど誰一人としてそれを気に留めなかった。この都会で他人に、ましてや野良猫に憐憫の情を持つ人間なんていやしない。

 

それでもその野良の黒猫は鳴き続けた。鳴くことだけが野良の黒猫にできる唯一のことだった。すると近くのアパートからある男が出てきた。サラリーマン風の男でまだ若い。20代中盤といったところだ。手には金属バットが握られていた。外に出ると男はしばらくそのバットを無心で振った。バットがブオンブオンと空を切る音がやけに目立った。

 

金属バットが手に馴染んだのか男は振るのをやめた。その頃は野良の黒猫は男の足元にすり寄ってきて頭を必死にこすりつけていた。男はおもむろにポッケットから缶詰のようなものを取り出した。サバの缶詰だった。男はサバの缶詰の封を開け、野良の黒猫の元においてやった。野良の黒猫は一目散に飛びつき、ペチャペチャと音を立てて一心不乱に食べた。

 

 

男は野良の黒猫がサバ缶に夢中になっていることをしかと確認するとバットを野良の黒猫に思い切り振り落した。次の瞬間、野良の黒猫の具骸骨が砕ける音がした。野良の黒猫は声にならない叫びを一瞬だけ上げ動かなくなった。男はなおもバットを数回野良の黒猫に向かって振り落した。男の顔には薄い刃物のような笑みがこぼれていた。

 

 

【それを僕は見ていた】ただただ陰から傍観していた。別に恐怖で足がすくんでただ見ていることしかできなかったわけじゃない。鼻から関わり合いになるつもりなんて毛頭なかった。僕はいつだって傍観者だ。中学時代のクラス内のいじめだって、街中で暴漢に襲われている女だって見て見ぬふりをした。僕はいつだって傍観者だ。今までも、そしてこれからも。

 

 

 

追記

ホラーチックなものを書いてみたくてこのような内容になりました(笑)街中で襲われいたら警察を呼びます(笑)