開放感。ああ解放感。
「池袋で大便をした話」
探していた。
何を?
トイレをだ。
もうそこまで来ている。
今にもケツの穴を突き破って奴さん(ウンコ)が出てきそうなんだ。
俺はケツを後ろに突き出しながら歩くという原始人スタイルでひたすらトイレを探していた。
綺麗なトイレを。
この期におよんで何を贅沢を思うんだろうが、ここだけは妥協できない。
汚いトイレでウンコなんかしたくないんだ。
しかしうかうかなんかはしてはいられない。すぐそこまで奴さん(ウンコ)の足音が近づいている。
タイムリミットは近いんだ。
もし、もしも仮にこの池袋という街の真ん中で良い大人の俺がウンコを漏らしたらどうなるんだろうか。
人々の好奇の視線にさらされて俺は精神を正気でいられるのだろうか。
そうならないためにも一刻も早く綺麗なトイレを探さなければならない。
そして俺は神のような存在に誘われるように池袋駅の構内に迷い込んだ。
副都心方面のエチカという駅地下商業施設に方面に何の気なしに行くと神の思し召しのかのように有料トイレが設置してあった。
こんなことがありえるだろうか。
こんなドンピシャなタイミングで綺麗に違いないであろう有料トイレの出現。
何か人知を超えた作為的なものを感じた。
しかし、俺のケツはもうすでに悲鳴を上げつくしている。
限界だ。
急いで100円を入れて俺は有料トイレに突入した。
目の前にはユートピアが広がっていた。
なんだここは。
重厚かつシックなデザインに、優しいクリーム色の照明。
トイレ中がラベンダーの香りに満ちていて、ハーブの音色まで流れている。
まるで女性のパウダールームかのような大きい鏡に全身鏡まで用意されている。
個室も広々としていてとても一人用とは思えない。
普通のトイレの1,5倍ほどあるようだ。
しかし面喰ってる場合ではない。
急いで個室に入り、カギを閉めズボンを下した。
ズボンを下した俺は一気に溜まりにたまった奴さんを全精力をかけて噴出した。
そこからは記憶が定かではない。
桃源郷をさまよっているかのようだったからだ。
例えるならば終わらない射精の快楽。
気が狂うほどの圧倒的快楽。
腸に溜まりにたまった奴さんがとめどなく出てきやがる。
終らない、終わりたくない押し寄せる快楽の波状攻撃。
全能感。
この世の神にでもなったかのような圧倒的全能感が襲い掛かってくる。
この世のあらゆるものでは代替不可能であろう快楽。
ドラッグ、セックス、高級料理、ありとあらゆる嗜好品ですらこの快楽は超えられない。
今の俺を見たら確実にクスリをやっていると勘違いされるだろう。
それくらい瞳孔がガバガバで鼻汁口汁まき散らしているのだ。
しかし何事にも終わりは来る。
寄せては返す圧倒的全能感は徐々に弱まり、俺は現実に引き戻された。
しばらくして落ち着いた俺はトイレを出た。
雑踏の中で先ほどのことを思いだす。
病みつきになりそうだ。これからは奴さんを限界まで我慢することが習慣となってしまうかもしれないな。
これを読んでくれた読者にもこの快楽を是非味わって欲しい。