林檎
日曜日にサンシャインシティに行った。
休日だからだろうが人が大挙しておりまさにすし詰め状態だった。
家族で来ている者、仲間と来ている者、恋人と来ている者、皆が一様に楽し気で浮かない顔をしている人間なんてこの世界に自分一人だけのように錯覚しそうになった。
まるで深海を一人で彷徨っているかのような気分だった。
特設ステージでは沖縄出身らしい歌手が開放的な歌を歌っていたが、今の僕にはこれっぽちも響くことはなかった。
逆にポジティブな気持ちを押し付けられているようで不快だった。
今の僕にはもっと優しい歌が必要だと思った。
ありのままでいいとダメな僕を肯定してくれるような、そんな歌ならもっと聞きたいと思った。
僕は就活も上手くいかず、大学を卒業する見込みも立っていなかった。
これっぽっちも未来に希望なんて描くことが出来なかった。
ふらりとサンシャインシティ内の若い女性向けの服屋に入った。
店外での店員による商品全て半額だと呼び込みのせいか店内は若い女でごった返していた。
店内での男は僕だけだったが誰も気に留めていない。
僕は噛んでいたガムを適当に手に取ったTシャツの裏に引っ付けて店を出た。
歩きながら誰かが、僕がひっつけたガムを見て驚愕し怒り出す光景を想像すると幾分気持ちが晴れた。