読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

洗体戦隊

クソ大学生の日々の日記

天国メイドイン

上京して芸人を始めて早五年が過ぎた。芸人の活動は専ら月に一回の劇場のライブのみ。他の日はほぼコンビニの夜勤アルバイトという終わりの見えない下積みライフを送っていた。僕はコンビを組んでいて、相方は高校生の同級生。コンビ名はトィンクル。コンビ結成時に二人でお笑いで天下を獲ろうと誓い合った日がはるか遠い昔に感じた。はっきり言ってお笑いというものに嫌気が差していた。いや、お笑いは好きだ。お笑いの才能がこれっぽっちのない自分にほとほと嫌気が差していた。

さっき月一のライブが終わった。ライブはお客さんによる投票で毎回ネタのランキングが付けられる。僕らトィンクルは10組中7位だった。こんな売れてない若手ばかりのライブでもドンケツに近い番号しか取れないなんて恥じでしかない。才能がないのは火を見るより明らかだ。

今からライブに参加した芸人達で打ち上げだ。売れてない奴らばかりの掃きだめみたいな打ち上げに行く価値なんて何も見いだせなかったが、否応なく参加費4000千を幹事らしき芸人に徴収された。仕方なくライブ会場近くの打ち上げに使われる大衆居酒屋に向かった。着いたがまだ誰もいないの相方と二人で外で待つ。でしばらくすると続々と他の参加した芸人が集まり始めた。

大分揃ったので店に入り皆、席に着いた。ビールを人数分頼み、打ち上げが始まった。各々喋った。ライブのこと。お笑いのこと。生活のこと。女のこと。皆が楽しそうだった。「ビッグになろうぜ」「好きなことやれてて幸せだよなー」「彼女から金せびってきた」下らない会話。混ざる気にもならなかった。時間の無駄。無為。無意味。

「おい。お前楽しくないなら帰れよ!」参加していた芸人のYにふいに言われた。そんなに暗い顔をしていたのだろうか。「帰れっつってんだよ!お前みたいなのがいるとせっかくの飲み会が盛り下がるだろうよー!ランキングの順位も低いくせによ!才能ねえんだよお前!」ここまで言われると流石に腹が立ったてきた。

殴る。ボコボコにする。そう決心して僕は立ち上がった。「てめえ、殺すぞ」「あ?」「殺すっつったんだよ!」僕はそうYに向かって叫び、近くにあった灰皿を持ち飛びかかった。どよめく周り。止められる間もなく、僕は灰皿でYの頭部をぶん殴った。クジラの潮吹きのように勢いよくYの頭部から血が噴き出した。それでも僕は灰皿で殴り続けた。Yの頭を完全にかち割れば、何かが変わる。そんな気がした、そんな夜。