お正月って一晩中電車走ってるの知ってた?
ども、藤田だよ。今日でマイコ(高級ダッチワイフ)編も終るよ。
不思議なもんではじめは、いやダッチワイフに恋してる奴はあかんやろって思ってたんだけど今じゃ人それぞれの愛の形を尊重すべきだっていう心境に至ってるよ。
もしかしたらマイコ(高級ダッチワイフ)の話は誰かの実話かもしれないしね。
それでは本題突入
* * *
マイコ(高級ダッチワイフ)との別れは突然やってきた。
現実は物語のように劇的なお別れは用意はしてくれない。
その日俺たちは冬の海に向かっていた。マイコ(高級ダッチワイフ)が突然、冬の海を見たいと言い出したからだ。
正確にいうとマイコ(高級ダッチワイフ)は何も言っていないのだが長年の付き合いで冬の海を見たがっているのを感じた。
そうして車を一時間弱飛ばして、某海岸についた。
当然人がいるわけもなく、おれとマイコ(高級ダッチワイフ)だけだった。海についたのはいいが何もすることがなく俺たちは手持ちぶたさに並んで座り込んでただただ茫然と冬の海を眺めていた。
時刻は夕刻。
ふとマイコ(高級ダッチワイフ)の横顔を見ると普段は眉一つ動かさないはずのぽーかフェイスが微妙に物憂げな表情に変わっているのがわかった。
センチメンタルな気分にでもなっているのだろうか。
こっちまで悲しい気分にでもなるではないか。
夕刻の空も相まって本当に悲しい気分にこっちまでなってきた。
昼と夜が混ざり合った朱色の空は今にもカタストロフが起きそうだった。
その時、突然四人のガラの悪い男たちが俺たちに近づいてきた。
そしてマイコ(高級ダッチワイフ)が人形だとわかると口々に侮蔑の言葉を容赦なく浴びせかけてきた。
男たちは興味本位でマイコ(高級ダッチワイフ)に触れていく。
やめさせようとすると問答無用で羽交い締めにされ折檻を受けた。
途切れかけていく意識の中で僕が見た景色は奴らの仲間の一人が肉食獣のような雄たけびをあげながら身勝手な性欲をマイコ(高級ダッチワイフ)で満たそうとする悍ましいものだった。
意識が戻るとそこには黒焦げのマイコ(高級ダッチワイフ)がいた。
正確にはかろうじて人の形を保った黒い何かがそこにあった。
奴らは順番に己が穢れた性欲をマイコ(高級ダッチワイフ)で満たし、最後には火をつけたのだろう。もはや人間のすることとは思えない。悪魔の所業だ。
しかし僕の胸は不思議とこれまでにないほどクリアーになっていた。
もしかすると俺は誰かに強制的にこの生活を終らせたったのかもしれない。
俺だって本当はわかっていた。しかし絶望的モテない俺にはマイコ(高級ダッチワイフ)しかいなかったのだ。
けれどようやく踏ん切りがついた。明日からリアルの女を抱く。
日本中のありとあらゆる女を抱いてやる。
いつのまにやら暴漢たちから受けた身体の痛みは消え去り、抑えようのない興奮に全身が包まれていた。
明日から合コンに次ぐ合コン、街コン、婚活パーティとありとあらゆる手段を使い女をゲットしよう。
俺は高まる野心を必死に抑えながら車に乗り込んだ。
追記
これでマイコ編は終わりです。最終的にはやはり人間の女を抱きたい気持ちに戻った主人公でした。
とりあえずヤリまくるために頑張るそうです。